前回は約1000年前にレンダーシア大陸に侵攻した不死の大魔王ネロドスの業績と治世について自分なりの考えを書いてみました。
今回はネロドスの次代の大魔王であるマデサゴーラの業績を考えてみたいともいます。
後編として大魔王マデサゴーラの統治した魔幻都市ゴーラについて
以下ver.5.3までのネタバレあり!
二代続けての魔界西域を拠点とした大魔王
マデサゴーラは先代の大魔王であるネロドスのアストルティア侵攻計画の失敗と死亡後に魔界西域で起きたネロディオス覇王国の分裂と戦乱の中で頭角を現したと考えられる魔王ですが、魔王であると同時に偉大な芸術家としての顔を持った存在でした。
グラデイル台地の「大魔王顔壁」でもネロドスと並んで彫られていますが、大魔王として大きな業績を残した者だけが顔が彫られるという中で魔界西域出身の大魔王が二代連続で彫られているという事になります。しかし同じ魔界西域を拠点とした大魔王であってもその勢力や統治の方法には大きな違いがあったようです。
ネロドスはネロディオス覇王国の統治者として積極的に戦争を行い魔界西域全土を武力によって統一を果たしました。部下であり自軍の中核でもある魔軍十二将に対しては不死のチカラを褒美として与えることで手柄と忠誠を競わせるというものでした。
それに対しマデサゴーラは魔界西域の中で、資源もなく戦略的価値が低いと思われている一部地域を拠点とし積極的な軍事行動はしていなかった様子です。
腹心であるゼルドラドもマデサゴーラの芸術に感化され自ら望んで部下となった存在であり、魔元帥ゼルドラドの下に当時の魔界でも実力者であった、ガルレイ、ブレンダ・ベリンダ姉妹、ファズマ、ゲジュラらが四魔将として仕えるという統制のとれた組織でした。
ネロディオス覇王国はネロドスの死後分裂し戦乱状態に突入しますが、魔幻都市ゴーラはマデサゴーラ死後も魔瘴竜ジャオマンダにより土地を汚染され多くの住民を失うという惨事に襲われたものの真・魔幻宮殿においてヌブロ長老を中心として生き残った人々と団結してゴーラを維持していますし、人々のマデサゴーラやゼルドラドへの尊敬と忠誠もいまだに健在です。
大魔王ヴァルザードの興した海運都市ザードの例もあるように大魔王の死後は統治した国家や都市は程なくして滅ぶという事例が魔界においては多くゴーラやゼクレス魔導王国のほうが例外なのかもしれません。
さらに同じ魔界西域の国家であるバルディスタ要塞の住人とゴーラの住人達とではだいぶ気風も違うようです。
前編で魔界西域には武断的な体制を好む気風があるのではないかと書きましたが、個人的にはバルディスタ要塞の住人の方が西域の住人らしい気風を持っていているのではないかと考えます。
よくわからないマデサゴーラの治世
当代の勇者と盟友であるアンルシアと主人公に倒されたマデサゴーラですが、つい最近まで大魔王として君臨しおり、彼に仕えたヌブロ長老やギュイス、孫であるペペロゴーラも存命であるにも関わらずネロドスの死後いかにして魔界西域で頭角を現し大魔王にまで駆け上ったのかについての資料は現在の処確認することはできません。
「ヴァルザード戦記」「亡国の記憶~ネロディオス覇王国~」といった本の中で他の魔王たちの経歴は紹介されますがマデサゴーラについては芸術家である彼の作品について書かれた本がほとんどです。
また、現在の魔界三強国の魔王であるヴァレリア・ユシュカ・アスバル達三名もマデサゴーラについて触れる発言はほぼ無かったと記憶しています。
ヴァレリアに関しては同じ魔界西域を拠点とする魔王であり彼女自身が約1000年前のネロドス死後に起きた戦乱の中で頭角を現し西域最大の勢力バルディスタ要塞を建国したと「バルディスタ戦記下巻」という本に書かれています。
つまりマデサゴーラが大魔王に就任する前後において魔界西域最大の勢力はバルディスタ要塞であったという事になります。
ヴァレリアとマデサゴーラ双方が西域の覇権をかけて争ったとすれば記録として残ったりヴァレリア自身から語られると考えられますが、それもないということは双方が争った事はなく西域の覇者とならないまま大魔王として戴冠したと考えられます。
ネロドスだけでなく他の大魔王と比べてもかなり異質な大魔王だったといえるのではないでしょうか。
大魔王として戴冠するまでの経緯は芸術家としての功績以外は謎が多いマデサゴーラですが大魔王になった後は自らの居城がある魔界西北地域全体を都市機能と芸術作品が融合した魔幻都市ゴーラとして整備し強力な配下と軍勢を率い魔界きっての強国にまで成長させたようです。
フィールドマップの一部に都市があるではなくマップ全体が都市というのはおそらくドラクエ10内でも最大規模の都市であり比較出来るものが在るとすればリンジャハル海岸全体が遺跡として残っている「海運都市リンジャハル」くらいでしょうか。
歴代大魔王の中でも主人公を除けば最も弱小勢力のまま大魔王となった可能性があるマデサゴーラがいかにして魔界きっての強国にまで成長させたのかその治世と功績を考えてみたいと思います。
マデサゴーラの治世と功績
偉大な芸術家であると同時に大魔王として戴冠したことが最大の業績とされていると考えられますがそれが本当の業績なのでしょうか。
マデサゴーラの治世を考えるうえでいくつかの推測を元に考えてみたいと思います。
- 元はネロドスの部下だったのでは
- 資源の無い地域でも人口が多かったのでは
- 芸術を通じての外交があったのでは
1.についてですが魔界西域の魔王としてはネロドスやヴァレリアに比べて武勇に関る記録がほとんどない魔王です。
ネロディオス覇王国の分裂による内乱の中で自勢力を形成していくえで周囲に語られる武勇は必要なはずですがそれがないというのは不思議です。
当然、マデサゴーラ自身が弱い魔族というわけではないので考えられるのはネロディオス覇王国分裂の時すでに一定程度の勢力や拠点を確保していたのではないでしょうか。
そこで可能性として元々マデサゴーラは大魔王時代のネロドスの部下だった可能性があるのではないでしょうか。
実力的には魔軍十二将達にも匹敵するかそれ以上の実力があったでしょうが、ネロドスのアストルティア侵攻に従軍していないことを考えると当時は実力を認められていないもしくは実力を隠していた可能性も考えられます。
もしかするとネロドス統治時代は魔界西域においても辺境とされている北西部のさらに一部程度の行政長官を任せられていたのかもしれません。
つまらない任務だったでしょうがその期間に芸術作品の制作に打ち込んで代表作の中でも初期作品に分類される「朝食 その悲しみ」などの作品群を描き上げ芸術家として名声を高めた時期であったとしたら興味深いです。
2.についてですが、これは元々がネロドスの配下であったという考えの延長なのですが、ネロドスの死後におきた戦乱はマデサゴーラの居た地域が辺境だったとはいえ戦火が及ん事でしょう。
おそらくその戦乱においては武勇が語り継がれていない事からも自勢力の拡大のために攻めるという事はせずにひたすら守りに徹し目立たないようにしながらを支配地域を守り抜いたと考えられます。
戦乱が拡大していく中で資源の無い地域では守るために傭兵を雇うことも難しいでしょうしどうやって戦力を確保したのかですがマデサゴーラの治めた地域には多くの人口を抱えていた可能性がありそれによって戦力を補充していたのではないでしょうか。
戦乱が拡大していく中では大量の難民が出ます。
難民として住民が流失してしまった土地では労働力も兵員も補充が難しくなります。その補充として奴隷や傭兵が必要とされる場合がありますがそれが幼少期のヴァレリア達のよう存在です。
立地的にも北西の端に位置し南側以外から攻められる可能性の低いゴーラは守りに徹することで土地の荒廃を防ぎ流入してくる大量の難民を受け入れることで戦乱により人口が減っていく西域において多くの労働力を抱えた勢力となった可能性があります。
当然、難民を受け入れるという事は現実には簡単ではなく既存の住民との軋轢が生じますし難民たちを食べさせていくだけの経済政策がなければいけませんが、それを解消するための公共事業がゴーラ領全体を巨大な都市として創りかえるという計画のスタートだったのかもしれません。
ゴーラ住民と新しく流入した難民とが一つの目的に向かって団結できたとするならそれはマデサゴーラの卓越した才覚とカリスマ性があっての事でしょう。
少なくとも現在に至るまでのゴーラ住民のマデサゴーラへの尊敬や忠誠心をみるかぎりかなりの善政を行っていたと考えられます。
そうしているうちに魔界北西の他の勢力も自らマデサゴーラの支配下に加わりたいと考え始め気づけば北西部の広範囲を支配下に治めゴーラの魔王として即位したのかもしれません。
戦乱を拡大させる方向ではなく内政重視の治世というのはすくなくとも魔界西域においてはかなり珍しく大きな業績といえるのではないでしょうか。
3.についてですが内政に注力し西域内の戦乱に対しては積極的ではなかったとしても多くの人口を養うための公共事業やゴーラの都市建設など膨大な資金が必要であり、さらにバルディスタ要塞が最大勢力として台頭してくる中では万が一に備えても南方の警備にも気を使わねばならなかったはずです。
内政・軍事と多くの資金が必要な中で豊富な労働力を抱えていても、資源の乏しいゴーラの土地でいかにその資金を調達していたのでしょうか。
可能性としては自らの芸術家としての名声を利用し、魔界東部や南部の勢力との交流をはかり経済を活性化させたのかもしれません。
あくまで想像ですが、ヴァルザード統治時代の魔界南部とゼクレス魔導国は戦争をしゼクレス側が敗北していますので海運都市ザード消滅後の小国家群が交易で通じ繋がっていた南部地域と正式な外交や交易は行われていなかった可能性もあります。
また、交易があったとしても大国で購買力があるゼクレス側が圧倒的に有利な条件で取引が行われていたかもしれません。
ゼクレス魔導王国では貴族文化が栄え美術品や魔力を秘めた宝石の取引が盛んです。
そこに目を付けたマデサゴーラがジャリムバハ砂漠で産出された宝石をゴーラで魔力のみならず美術価値も高めるように再加工しゼクレスの貴族に販売していた可能性はないでしょうか。
魔界南部の勢力としても宝石を買い叩かれるよりも芸術家として名高い魔王マデサゴーラに宝石を一度収めることでブランド価値を高めることが可能ですし宝石の販売先が増えることはメリットがあるはずです。
さらに今から300年以上前のゼクレス魔導国はイーヴ王の時代です。
イーヴ王は身分制度改革を行おうとしたり、臣下に相談なく他国と国交を結ぼうとするなどアストルティアを含めゼクレス魔導国の外の世界に強い興味も持った王でした。
そういった王の時代では新鮮な感覚を持ったマデサゴーラによってデザインされたゴーラ産の加工品はとても珍重され高値で取引されていたことでしょうし、ゼクレスの商人たちによりゴーラに積極的な投資も行われたのではないでしょうか。
このように魔界西域での覇権争いではなく西域以外との取引や外交で富を得て、それによってゴーラを強国にまで押し上げたの可能性はあり得ると考えます。
イーヴ王が国交を結ぼうと考えた国とはゴーラだったのかもしれません。
では、なぜ国交を結ぶことを反対されたのでしょうか。
その理由が、魔界における歴史の問題でありそこを超えた事こそが大魔王マデサゴーラの最大の業績だったのではないかと考えます。
魔界西域という呼び名の違和感
ver.5.0で魔界に来た当初から非常に違和感があった言葉「魔界西域」
ゼクレス魔導国のある地域は魔界東部であり東域とは呼ばれませんし、ファラザードある地域は魔界南部であって南域とは呼ばれません。
そもそも西域という言葉自体が特殊なのです。
※西域とは古代中国で生まれた概念であり、中華世界より西側の国々・異民族の住む世界を指す言葉です。現在のタリム盆地周辺の国家群や異民族たち指していましたが、歴史と共に範囲は変化していき基本的には中央アジア地域ですが、時としてインド亜大陸やイランを含む西アジア地域も含まれました。
西域という言葉に含まれる「異民族の住む場所」が魔界においても使用されているという事は魔界においては、政治や文化の中心はゲルヘナ原野からみて東部や南部であり西部地域は異民族が住んでいるとかわらない文化も未発達な地域と見下されていたということではないでしょうか。
ネロドスは国家が乱立していた西域を武力による統一で、大きくまとまれば東部や南部にも対抗しうると証明した偉大な功績がありますが、その手法は他の地域から見ればいかにも西域らしい手法だったのかもしれません。
力こそ全てであり逆らうものは次々と滅ぼし奪うが魔界の掟であったとしても長く国家を維持し貴族文化の華やぐ魔界東部や、交易によって小さな国家であっても生きていく術を知っている魔界南部からしてみれば自分たちの蛮行は棚に上げた上で、ネロドスの武勇を称賛しつつ、いかに強力な大魔王であってもやはり西域の魔族は野蛮で文明的ではなく自分たちより劣った存在だとどこかで感じていたかもしれません。
そんな西域から
武力だけに頼らない国力の増大、さらに魔界芸術史を塗り替えるような新しい価値観を提示する芸術家を魔王として頂いた国家ゴーラが誕生した。
これによって魔界西域に対する見方が変わり、西域自体が文化の力に気付き弱肉強食だけではない今までとは違う生き方ができる可能性を見せた事自体が大魔王マデサゴーラの最大の業績だったのではないではないかと考えます。
マデサゴーラの忠臣であった魔元帥ゼルドラドは「雷葬」という作品を見て臣従することを決意したと語られています。
彼の最大の望みはマデサゴーラが創る「新しき世界」を見る事だったようです。
ゲルヘナ原野の剣魔の里出身と考えられるゼルドラドが西域国家ゴーラの魔王に心酔したのは彼の出身であるゲルヘナ原野が魔界の中央に位置するにも関わらず大陸一覧では辺境エリアに分類されている事と無関係では無いかもしれません。
いかに実力があっても辺境出身ということで、世間からも自分自身からも生き方や可能性を制限されてしまう風潮が魔界にあったとしたらマデサゴーラが提示した新しい芸術と世界を創り変えるという野心に自分の命を懸けてみたくなったのかもしれません。
これからの魔界西域
前編でも書きましたが現在魔界西域最大勢力はバルディスタ要塞であり魔王ヴァレリアはマデサゴーラ時代に比べてネロドス時代に先祖返りしたような力こそ全てという考えに基づいた支配をしています。
ヴァレリアが不在となると簡単に内戦状態になってしまうような非常に脆弱な国家ですが住人たちはそれをどこか受け入れてしまっているようです。
マデサゴーラが提示した新しい価値観は無に帰してしまうのでしょうか。
そんな事はないと信じます。
ゴーラ領にはマデサゴーラの治世を経験した住民たちがまだ多く生き残っています。
祖父を超える芸術家になろうと野心を持ったペペロゴーラもいます。
ネロドスによって自分たちは統一できることを知り、マデサゴーラによって文化の力を知った住民たちはこの先も苦労しながらであっても着実に西域の地位を向上させていく事でしょう。
ゴーラ領には、何者の支配も受けず奴隷となった下等魔族を解放した大魔導士リドの霊廟があります。
「己のチカラと知恵のみを 信じ 何者にも 支配されず 己を神として生きる」
このリドの精神はネロドスやマデサゴーラにも受け継がれていたのでしょう。
リドの精神を受け継いだ大魔王達の精神もまた誰かに受け継がれていくはずです。
魔界西域から二代続けて大魔王が誕生したことも偶然ではなく魔界の歴史においての必然だったのかもしれません。
今回はここまで