今回は魔界の各地にある関所からそれがどういった役割だったのか、関所をみることで魔界の歴史がみえてくるのではないか考えを書いてみたいと思います。
以下ver.5.2までのネタバレを含みます。
魔界の関所
魔界に存在する関所は地図上に明記されているものでは、ゲルヘナ原野のベルヴァインの森関所・バルディスタ山岳地帯関所・ジャリムバハ砂漠関所とジャリムバハ砂漠のディンガ交易所入り口を長く封印していたディンガ関所の四か所です。
※関所とは、陸路・海路の要所におかれた検問や租税を行うための施設です。
関所の役割や数は、時代や情勢により変わります。
一国の中で各地域の貴族・軍閥・宗教勢力などが独自に出入りする人や物に対して検問や税金を取る代わりに通行者に対して安全を保障する目的で数多く設置された時代もあれば、国が主体となり税金を徴収する目的ではなく各地域の軍事防衛や治安維持のために人・物の出入りを把握・管理する目的で城塞として設置された時代や国もあります。
魔界においての関所にはどんな役割があるのでしょうか。
租税や検問も大事な役割でしょうが見た目としては他国からの軍事防衛を目的として国境に置かれているのかもしれません。
その理由は各関所のデザインからです。
ジャリムバハ砂漠のディンガ関所を除くゲルヘナ原野にある三か所の関所はどれも同じ造りになっており、違いは関所を抜けた先の勢力である現在の魔界三強国の旗や紋章、かがり火の色の違い程度です。
関所の構造は石積みの重厚な壁と扉、そして壁には外殻塔(内側にだけ開いた塔)や壁の上にはのこぎり壁・のこぎり型挟間(凹凸があり身を隠したり覗いたり矢を射るための壁)思われる防衛設備が設置されています。
一部、現実世界の中世ヨーロッパの城塞を思わせるような構造でありゲルヘナ原野側から他国の侵攻を受けた時にこの関所が防衛拠点として利用する目的として建造されたと考えます。
防衛拠点としての関所
他国からの侵攻に対しての防衛拠点として建造されたと思われる関所ですが、上手に運用できているのはバルディスタ要塞ぐらいのようです。
ver.5.1で発生した魔界大戦では、バルディスタ軍がベルヴァインの森関所・ジャリムバハ砂漠関所をいとも簡単に突破しその先にあるゼクレス魔導国・ファラザード領へ侵入しています。
ファラザードに関しては関所で防衛するよりは砂漠へ引き入れそこでバルディスタ軍を消耗させてから戦う戦術だったようですがゼクレス魔導国に関しては関所を突破されそのまま王都への侵入を許しバルディスタの魔王ヴァレリアがゼクレス城にまで突入してくるという非常事態に陥りました。
これはゼクレス軍が油断し弱かったからかもしれませんが関所が防衛施設としてまったく機能していなかった可能性が高いように思えます。
関所の構造が防衛設備として機能しないことを知っていたからこそファラザードはあえて通行させその先に罠を張るような戦い方を考えたのかもしれません。
ゼクレス魔導国もベルヴァインの森は見通しが悪く道も細く曲がるしかない地形があるのでいくらでも待ち伏せや狭い道を封鎖して防衛し時間を稼ぐことは可能だったと思われますが現在のゼクレス魔導国には有能な指揮官が居ないのかもしれません。
もしくは、内政に関しては有能でも軍事には疎く非常に感情的な決定をしてしまうエルガドーラ王太后が方々に命令を乱発して現場を混乱させ指揮官たちのやる気や能力を削いでしまっていた可能性はあるかもしれません。
※16世紀スペイン帝国の最盛期に君臨したフェリペ2世のアマルダ海戦や17世紀のフランス王国で太陽王と呼ばれたルイ14世のスペイン継承戦争のように絶対的権力と最強の軍隊を持ちながら、王宮から軍隊の前線まで細かい指示を送りたがりそれにより前線の柔軟な対応を阻害してしまい重大な局面で敗北してしまったという例もあります。
一方、バルディスタ要塞は関所を防衛施設として上手に利用できていました。
ファラザードと同じく相手を関所内に引き入れるところまでは同じですが、バルディスタの場合は関所から山岳地帯に入った街道のすぐ横手にある丘の上に兵士と軍馬、そして魔瘴弾を発射できる大砲を置いた基地を設置している事で関所の門からなだれ込んできた敵兵に対し横矢をかけるという防御施設となっています。
横矢をかけられた敵兵が前進しようにもバルディスタ要塞の街道はすぐ先で細いトンネルが待ち構えており、そこに兵士を詰めさせれば少ない人数で防衛することが可能です。
実際に魔界大戦でもゼクレス・ファラザード連合軍はこの関所を抜けた先の空間で横矢を受け足止めを食らい中々前進できなかったようです。
さらに丘の上の基地を攻略しようにも前方のトンネルから魔王ヴァレリア自身が突撃してくるので前と横から挟撃され数の優位を生かせずに攻め込んだ側が劣勢という状況まで作られていました。
ゼクレス側の太古の魔人による一撃で戦況は一変しますが、そのままバルディスタ要塞を陥落させるための進軍はせずにゼクレス軍が撤退、ファラザード軍も副官であるナジーンを失った事で撤退を余儀なくされます。
ゼクレス軍が撤退した理由はエルガドーラ王太后が魔王ヴァレリアを討ち取りバルディスタ軍に壊滅的ダメージを与えたと勘違いした事によりますが、他にもこれ以上前進するのが難しいほどの被害がゼクレス軍にも出ていたのかもしれません。
防衛施設として上手に利用できるかは各国によって変わるようですが、ゲルヘナ原野の三か所の関所以外にも同じ構造の建物が魔界にはいくつかあります。
それらの中には、今は地図に記載されていないが当時は関所の役割があったり防衛施設であったりしたはずです。次でそれらを紹介したいと思います。
地図に乗らない関所
地図で表記されていないが関所である・あったと思われる同じ構造の建造物として
- ベルヴァインの森東への入り口にある城壁
- バルディスタ要塞入り口の城門
- ザハディガル岩峰への関所
- 魔幻都市ゴーラ領への関所
- ゲルヘナ原野南西・ネクロデア領への国境の関所
- 旧ネクロデア領内で地図上のFー3
- 旧ネクロデア領Dー6北
- 旧ネクロデア領Dー6南
確認できるだけでも八ヶ所存在します。
1.ベルヴァイン東への城壁はこの先にはゼクレス魔導国の王都があり王都の最終防衛となる場所でしょう。
ゼクレス魔導国は建国王ワラキウスの時代にすでにゲルヘナ原野までその影響力を伸ばしていることから国境の関所として建造されたといういうよりは王都の防衛を目的として置かれたのかもしれません。
2.バルディスタ要塞入り口の城門は完全に関所というよりは要塞の一部です。
魔界西部はネロドスの死後、分裂し各勢力が争いあう戦乱状態に突入しますが、以前書いた記事にネロドスの登場以前も長く分裂状態にあったのではないかという推測を書きました。
魔界西域の戦乱は、ネロドスの次の大魔王として戴冠する事となるマデサゴーラと西域最大の勢力を築き上げる魔王ヴァレリアの登場までいくつもの勢力が生まれては滅びを繰り返し城塞の主も何度となく変わる時代だったと思われます。
もしかすると、バルディスタ要塞入り口は過去にこの場所にあった勢力の本拠地をヴァレリアが奪いその城塞をさらに改築し現在の姿に造り替えた名残として入り口が残っているだけなのかもしれません。
バルディスタ山岳地帯関所での上手な防衛施設運用を考えるとヴァレリア自身やその部下は築城や防衛施設の運用に高い知識と経験を有しているはずです。
現在のバルディスタ要塞は過去にネロドスが建国したネロディオス覇王国の王都跡を改築して出来ているというような話があれば面白いと考えてしまいます。
3.ザハディガル岩峰への関所は魔界とアストルティアを繋ぐルクスガルン大空洞への門があり、現在ではバルディスタの遠征軍駐屯所がおかれている地域ですので、軍事的にも重要な地位です。
そこへの人の移動は厳しく管理する必要があるので関所が置かれるのは当然だと思われます。ルクスガルン大空洞が開いたのは500年ほど前に戦禍の邪神によってだと仮定した場合、関所が置かれたのは500年以内だったかもしれませんがそれ以前であったかもしれません。
ver.5のオープニングを考えるとユシュカは主人公を担いでこの関所を抜けた事になるのでしょうか。
4.魔幻都市ゴーラへの関所は、軍事的役割は少なそうです。
関所は他国のものとほぼ同じ構造ですが、バルディスタ山岳地帯から関所をくぐるとすぐ左右に屋敷が並んでおり、その屋敷にも武器や兵器のようなものも確認できないことから軍事的な施設というよりはゴーラ領に訪れた人々の宿泊施設や行政機関の役割があった屋敷のように思えます。
大魔王マデサゴーラが支配した地域ですが、長く戦乱が続いた魔界西域において西域最大の勢力であり大魔王に対しても服従を誓っていた様子もないバルディスタ要塞の領地と接していながら軍事施設とは思えない関所が置かれているのは芸術家でもあるマデサゴーラゆえの事でしょうか。
しかし、芸術家であり独創的な建造物や作品を数多く制作してきたマデサゴーラが他国と同じデザインの関所を置いているという事に少し違和感があります。
ジャリムバハ砂漠にあり、ザード遺跡と同時代に建造されたと思われるディンガ関所は他の地域にはない独創的な様式です。
この違和感から考えることを後で書いてみたいと思います。
5.ゲルヘナ原野南西・ネクロデア領への国境の関所は、現在確認できる物の中で最も防衛拠点として活躍した関所ではないでしょうか。
ネクロデア王国とバルディスタ要塞が争っていた時期、この関所はバルディスタ要塞の侵攻を何度も食い止めることに成功しています。
ネクロデア王国の武官が残した日記に記述があり、西域最大の勢力であり魔王ヴァレリアもネクロデア本国の領内に攻め込むことが出来なかったのだとすれば、魔王モルゼヌやその配下の指揮官たちの優秀さが際立ちます。
結果としては内部に潜入したゾブリス将軍の幻術によりネクロデア王国は滅んでしまいますが外部からの侵攻は跳ね返し続けたのだとすれば魔界最強の防衛力を誇った軍隊だったのかもしれません。
バルディスタ要塞でも関所の前方で防衛するというよりは一旦敵軍を引き込んで袋叩きにするという戦略をとっていますが魔瘴弾砲を使用してまで攻略してこようとするバルデイスタをどのようにして撃退してきたのかとても興味深いです。
6.7.8.ネクロデア領内の三か所からはネクロデア王国がその勢力を拡大していった過程が読み取れると考えます。
「ネクロデア王国建国秘話」という本によると、死地を彷徨っていた男が暗鉄神ネクロジームの導きによりネクロダイト鉱石を発見した事が始まりとされています。
おそらく山の中の小さな国家として出発したネクロデアがネクロダイト鉱石の精錬方法を確立し強い魔力を帯びた鉱石をジャリムバハ砂漠の小国家群との交易を通じて生活圏や採掘場を拡大させてきたであろう歴史が三か所の関所に現れているのではないでしょうか。
おそらく、建国から間もなくのころは地図のD-6北・D-6南の辺りまでが実効支配できている範囲で国境とされ南北に関所として建設されたと考えます。
その後、ネクロデア王国の国力が増し新しい鉱山の発見や王都の整備、住民の増加による新しい居住地の開発などで国土も北・北東側に拡大していった結果として新たな関所が地図のF-3に置かれたのではないでしょうか。
そして、最終的に大国となったネクロデアの鉱物資源の取引相手がジャリムバハ砂漠の小国家群に大きく依存している現状から自らゲルヘナ原野側に進出し直接ゼクレスやゴーラとの取引ができる通商路を開拓しようと領土の北側への道を切り開ていきゲルヘナ原野とネクロデア領の境界線に新たに関所を置いたと推測します。
ネクロデア王国の関所の建造された順番はD-6北南→F-3→ゲルヘナ原野南西の関所 の順番だったと考えます。
しかし、このゲルヘナ原野への進出がネクロデア王国にとって命取りになってしまった可能性があります。
魔界西部から魔界を武力統一する足掛かりとしてゲルヘナ原野へ進出を目論んだバルディスタ要塞と通商路の開拓を目的としたネクロデアのゲルヘナ原野への進出が重なりそこで衝突してしまったことが原因だったのかもしれません。
各地の関所は何故同じ構造なのか
魔界の各地域に点在している十一か所の関所や城門は防御施設としては運用が難しく不十分な性能しかないと思われるのに、何故同じ構造なのでしょうか。
現在魔界に存在する国家の中で最も歴史が古いのはゼクレス魔導国ですが、もしベルヴァインの森東にある王都への入り口ともなる城壁が関所として最も古いモノだったと仮定するとゼクレスの建国王であるワラキウスによって各地に建造されたのでしょうか。
ワラキウスは大魔王として戴冠を受けていますので、魔界の統治権の総覧者として各地に関所を設けたのかもしれません。
しかし、関所を置いたのがワラキウスであった場合を考えると、彼の死後に勃興してきた勢力やワラキウスの存命当時はめぼしい勢力がない未開拓の地域であった可能性もある魔界南西部(後のネクロデア王国領)地域に複数置かれた事が不自然に思えます。
ワラキウスが君臨した時代より4000年ほど下った時代にゼクレス魔導国とゲルヘナ原野で決戦を行った大魔王ヴァルザードがジャリムバハ砂漠に設けたディンガ関所は他の地域にない独自のデザインでした。
ヴァルザードが特別に型破りだった可能性もありますが、関所を置くときに必ず同じ造りにする必要はないという事なのだと思われます。それでも各地域に時代もバラバラに同じ造りの関所が置かれたというのには何か意味があるのでしょうか。
ひとつの可能性として、ワラキウス以前にすでに最初の関所は置かれており、建設させた人物の影響力は後世になっても絶大だからというのはないでしょうか。
影響力が絶大なので、後の世の魔王たちもそれを模倣し防衛機能が低くても、同じ構造の関所を国境や城壁の一部として置くことで最初に関所を置いた人物の権威を借りて自らの権威を高めその地域の支配の正当性を主張する目的があるのではないかと考えます。
では、その後世の魔王にとっても絶大な影響を及ぼす人物とは誰なのか。
一番可能性がありそうなのは始まりの大魔王ではないでしょうか。
始まりの大魔王は今となっては名前も顔も忘れられその人物像や思想は謎ですが、その業績は大きく現在の魔界の制度を作り上げた人物です。
その業績は「始まりの大魔王 五つの偉業」という本に記されています。
特に、4と5に関しては現在でも魔仙卿による大魔大生の選定と戴冠、そしてアストルティアへの遠征が行われており始まりの大魔王によって確立された魔界の大魔王制度が現在まで絶大な影響を与えているといえます。
歴代の大魔王が選定と戴冠を受けた目的はそれぞれでしょうが、魔界という世界では大魔王が選定されるまでは分裂と戦乱が続くという時代が多かったようです。
分裂していた魔界を初めて統一した始まりの大魔王は魔界各地を平定した証として魔界を旅する人たちの安全を確保するため、または各地方の行政を任せる部下たちの境界線をはっきりさせるために最初の関所を置いたのではないでしょうか。
その後、始まりの大魔王が初代勇者に敗れ再び魔界が分裂していった過程ではその関所で区切られた地域の中でまず覇権争いが起き、各地域の覇者となった者がゲルヘナ原野方面へ進出し大審問を目指すという大きな流れが出来と考えます。
ワラキウスは魔界東部の覇者に、ヴァルザードは魔界南部の覇者に、ネロドスは魔界西域の覇者になってゲルヘナ原野へ進出し大魔王となった事を考えると関所が置かれたことが大魔王の誕生のしかたにも大きな影響をもたらした可能性があり、大魔王となるにはまず各地域の覇者となることが最低条件と考えられ、まずはそれを目指す。
そして覇者となり自らの軍勢を率いて始まりの大魔王の置いた関所を大審問へ向けて通るとき、大魔王の選定を受ける資格を有した魔王だと魔界各地の勢力も認めるという風潮があるのかもしれません。
そういった風潮がある故に、その地域を支配する勢力が自らの支配の正当性と大魔王になる資格がある存在だとアピールする目的で最初の関所を模したものが各地域に建造されたのではないでしょうか。
始まりの大魔王の権威と影響力を借りるためが最大の目的であるために防衛施設としての機能が低かったとしても同じ構造で作られたのであり、マデサゴーラのように魔界西域の覇者とならないまま大魔王として戴冠した存在も自らの正当性を表すためにバルディスタ山岳地帯とゴーラ領との境界線に関所を建造したと考えます。
ネクロデアも支配領域を拡大していくたびに関所を置き、ついにゲルヘナ原野に進出した時にゲルヘナ原野との境界線に関所を設置したことが、魔界南西部地域の覇者が進出してくるという意思として捉えられたこともバルディスタとの開戦理由になったのかもしれません。
ジャリムバハ砂漠のディンガ関所ですが、これは魔界南部とそのほかの地域を区別する目的の関所ではないから斬新なデザインになったのかもしれませんし、ヴァルザード自身がどこかで始まりの大魔王の権威を借りる必要がジャリムバハ砂漠地域においては無いと考える型破りな人物だったのかもしれません。
最後に
今回は魔界の各地に置かれた関所について自分なりの考えを書いてみました。
始まりの大魔王が置いたことが全ての始まりだったとした場合、最初の関所はゲルヘナ原野にあるベルヴァインの森関所・バルディスタ山岳地帯関所・ジャリムバハ砂漠関所の三か所くらいだったのかもしれません。
ゴダ神殿の他にも始まりの大魔王が残した建造物がゲルヘナ原野にあるとしたらその実像を考える何かの材料にならないかと考えています。
そして、現在は主人公の城となっているデスディオ暗黒荒原の大魔王城ですがこれを建設させたファラザードの魔王ユシュカはデスディオ暗黒原野に置いていません。
これは、彼が始まりの大魔王の影響を受けない考えをしているもしくは意図的に新しい魔界秩序のためには関所を置く必要がないと考えているのかもしれません。
ディンガ関所を建設させたヴァルザードの子孫ではないかとの考えもあるユシュカですから、もしかしたら型にはまらない自由で英雄的な考えを受け継ぎその範囲はジャリムバハ砂漠を超え魔界全域に及んでいるのかもしれません。
今回はここまで