ネロドスからマデサゴーラへ 大魔王の治世を考えてみる 前編

主人公が直接戦っている二人の大魔王であるネロドスとマデサゴーラ、この二人の大魔王については記録はあってもその治世の全体像はよくわかっていません。

大魔王としての業績は何だったのかなど、個人的な考えを書いていきたいと思います。

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魔界地図

今回は前編として大魔王ネロドスの統治したネロディオス覇王国について

以下ver.5.3までのネタバレあり!

 

大きな業績を残した大魔王達

ver.5.3のストーリー上で訪れるグラデル台地にある「大魔王顔壁」そこに彫られた主人公を含めた五人は歴代大魔王達の中でも特に功績があったもの達だそうです。

 

その栄えある五人の中に、大魔王ネロドスと大魔王マデサゴーラは含まれており、この二人は二代続いての魔界西域勢力から大魔王になった存在という共通点もあります。

この二人の業績は何だったのかを考えるうえでも主人公を除く残り二人の大魔王である、始まりの大魔王大魔王ヴァルザードについても少し

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左から始まりの大魔王・ヴァルザード・ネロドス・マデサゴーラ

始まりの大魔王の業績については「始まりの大魔王 五つの業績」という本にまとめられています。魔界の統一や魔仙卿を見出したこと、そして魔界としては初のアストルティア遠征といった現在まで続く魔界の社会制度の基礎を気づいた大魔王であったようです。そしてアストルティアにおいて初代勇者である勇者アシュレイ・勇者レオーネの双子の勇者に敗れたと考えられます。

顔壁に彫られた顔が侵食され元の顔がわからない事や、主人公が舞踏会でとっさに踊った「始まりの大魔王の舞」などからその正体は時渡りで過去の魔界へ行った主人公自身であるとする説や主人公の兄弟姉妹説・パドレ説など様々な考察があるようです。

 

続いて大魔王ヴァルザードについて、ヴァルザードは歴代の大魔王の中でもかなり資料が残っているめずらしい大魔王です。彼の業績については「ヴァルザード戦記」「亡国の記憶~海運都市ザード~」の本で確認できます。

ヴァルザードの魔界においての業績というよりは英雄的なエピソードが多く、小国を起こしそれから大魔王に昇り詰めるまでと彼が起こした海運都市ザードが彼の死後滅びていく過程などの資料や当時を知る者の証言などもあり魔界にとってはその業績以上に英雄譚として語り継がれる存在なのかもしれません。

 

ヴァルザードの君臨していた時代などからアストルティアでは現在のグランゼドーラを建国した記録上としては二人目の勇者に倒された可能性があります。

顔壁に彫られた顔が現在のファラザードの魔王ユシュカに似ていることから、ユシュカの父親もしくは祖父なのではないかという説もあります。

 

以上の二人の大魔王やその他の大魔王についてもまた機会があればもう少し細かく書いてみたと思いますが今回はここまでとし、本題であるネロドスとマデサゴーラについて

 

魔界西域の大魔王

大魔王ネロドスと大魔王マデサゴーラは二人とも魔界の西域に勢力を持った大魔王でした。彼らの出自が西域なのかそれとも別の地域なのかはわかりませんが、ネロドスが統治者として君臨した「ネロディオス覇王国」は魔界の西域全土を支配していたとされていますので少なくとも現在のバルディスタ山岳地帯・ザハティガル岩峰・ターボル峡谷・魔幻都市ゴーラ跡などの地域はネロディオス覇王国の支配下にあったと考えられます。

 

大魔王マデサゴーラはネロドスが勇者アルヴァンとの戦いに敗れた後、次代の大魔王として戴冠した存在ですがネロドスとは違い魔界西域全土ではなく、西域の一部である現在の魔幻都市ゴーラ跡といわれる地域を拠点としていました。

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西北がゴーラ領・その下がバルディスタ山岳地帯

地図で見るとゴーラ跡と呼ばれる地域は西域においてかなり大きな面積を占めているように見えますが、同じく西域の国家であるバルディスタ要塞の兵士ゼンテツは

「あんな資源も何もない しょっぱい所 征服する意味ねえな。」

と発言することからも魔幻都市ゴーラのあった地域は西域において利用価値の低い貧しい地域という認識が一般的な様子です。

 

同じ西域を拠点とした大魔王であっても全域を武力で平定したネロドスと西域の辺境である一地域のみを拠点としたマデサゴーラ、この違いを考えてみるとそれぞれの考え方の違いや魔界の状況などが見えてくるのかもしれません。

 

ネロドスの治世を考えてみる

魔界西域全土を支配したネロディオス覇王国の統治者であった大魔王ネロドス

国名から考えてネロドスは大魔王であると同時に自らを「覇王」と名乗っていた可能性もあります。魔界には覇王国と呼ばれる国は他にも存在したようで大魔王に就く前のヴァルザードに打倒されたズムーラ覇王国という国家もありました。

※覇王とは古代中国の思想家「孟子」によって提唱された言葉で、儒教の理想とする徳によって世を治めることを王道と呼び、それとは逆に武力によって世を治めることを覇道、そしてそれを為そうとるものを覇者と呼ぶようです。

国名に武力によって統一をするという強い意志が込められているという事でしょう。

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覇王ネロドス

彼が支配していた時代の魔界西域は今よりも豊かな土地であったと考えられます。

現在のバルディスタ要塞の食堂にいるプリーヴォの発言で魔瘴の汚染が今よりなかった頃はきれいな水とバルディスタ産のホップで酒を造れたとありますので、少なくとも現在よりも豊かな土地で食料の生産なども今よりも多かったはずです。

※ホップは日射量が多く冷涼な土地が栽培に適しているといわれています。ほかにも同じような気候の土地ではキャベツ・トマト・メロン・ほうれん草・蕎麦なども栽培に適しているようです。

 

ネロディオス覇王国の政治体制ですが、おそらくネロドスを頂点とした大国がありその下にいくつもの形式上の独立国があるという封建的主従関係のようなものを基礎にした政体だったのではないかと考えます。

そう考える理由は、魔王ヴァレリアの発言にあります。

ver.5.0でヤイルを粛清した後にヴァレリアは少年兵時代の仲間たちについて

「バニト ディセル ルチオ タチアナ スーゴ……。

生まれた国は違ったが 皆 大事な仲間だった」

と語ります。

ヴァレリアはネロドス死後の戦乱で家族を失い傭兵たちに拾われ少年兵として戦場に送り込まれますが、その仲間たちが皆違う国の出身であったというのです。

ヴァレリアは1000年以上生きていると考えられますのでその時代にはいくつかの国が覇王国の下に存在していたという事になります。

 

魔界の西域以外から連れてこられた可能性もありますが、大魔王ネロドスは魔界全域を支配していたわけではなく魔界東部はゼクレス魔導国が支配し南部のジャリムバハ砂漠は元々が小国家群が交易によって繋がっている地域でしたのでネロドスの死による内乱は主に西域に限定されていたと考える方が自然ではないでしょうか。

 

話を戻しますと、おそらくネロドスは服従もしくは滅ぼした国を自分の部下に与えてその国を管理させる。その上で、部下たちに手柄と忠誠心を競わせていたのではないかと考えられます。ネロドス配下の軍勢において中核をになっていた側近集団魔軍十二将は激しい競争関係にあったという事は「不死の魔王と十二将」という本中にも書かれています。

 

ではなぜ、部下に手柄や忠誠心を競わせる必要があったのかですがそれはネロドス自身の能力である「不死のチカラ」が関係しているはずです。

魔界の歴史においても前例のないという唯一無二の能力である不死のチカラによって不滅の覇者と恐れられたネロドスですがその能力の正体は、倒した敵の死者の魂を集めそれを命の糧として使い不死の能力としていたというものでした。

そして集めた魂は魔軍十二将にも分け与えられ彼らもまた不死の存在となったのです。

また、死者の魂を集める役割をしていたのが魔軍十二将のひとりであるバズズです。

 

魔界において不死のチカラを持った存在はネロドス以外には存在していないとなっていますが。死者の魂を集めそれを糧にしていたというのは冥王ネルゲルと共通するものがあります。魔界において全く話題に上らない冥王ですが、ネロドスの能力を元に生み出されたのではないかという考えもあるようです。

 

部下たちに手柄を競争させ戦乱を拡大させる、そして戦乱のなかで集めた死者の魂を自らの不死のチカラにつかい部下にも分け与えることで忠誠を誓わせるというのがネロドスのカリスマ性を支え、ネロディオス覇王国を西域全体を支配するまでの大国に成長させた要因ではないでしょうか。

戦乱が拡大すればするほど自らの能力と側近が強化されるというのは敵対する相手からすれば恐ろしい存在なはずです。

 

ネロドスの治世は武力を背景とした、逆らうものは滅ぼされ側近として仕えるものには多大は報奨が与えられる可能性があるという非常に武断的なものだったのではないでしょうか。

 

しかし、そうだとするとネロドスが魔界西域を統一するまでもその後も戦争が絶え間なく起こっているという状況で魔界西域に住む住民にとってはかなり迷惑な話だったはずです。魔界の歴史においても唯一無二の不死のチカラをつかいアストルティアで勇者に敗れるまで無敗を誇った魔王であったとしても歴代大魔王のなかでも特筆すべき功績があったとして死後も讃えられる存在となったのはなぜでしょうか。

 

ネロドスの功績とは何だったのかを考えてみたいと思います。

 

ネロドスの功績とは

ネロドスが魔界において成し遂げた功績とは何だったのかといえば大魔王就任と自身のカリスマ性の他にはやはり魔界西域の統一でしょう。

では魔界西域統一が大きな功績と評価された理由は何なのでしょうか

  1. 魔界西域の統一自体が久々であった
  2. 西域自体に武断的な体制を好む気風があった
  3. 統一しなければいけない理由があった

思いつく理由としては以上のようなものでしょうか。

 

1.魔界統一自体が久々であった は初代大魔王の魔界統一以来魔界西域は常に分裂状態で小勢力が乱立し長期間の戦乱状態にあった可能性はないでしょうか。

魔族の寿命は人間の10倍以上あり1000年以上生きている魔族も多くいるようですが、ネロドスの死は約1000年前ですので、大魔王に就いたのはそれより以前であり、ネロディオス覇王国の統治者として魔界西域を席巻したのは大魔王就任よりもさらに前ですので、もしネロドスがヴァルザードの次の大魔王であった場合最大で3000年近く前から活躍していた可能性すらあります。

そうなるとネロドス登場以前の魔界西域の事情を知っている魔族の数は現在では少なく、ネロドス死後の戦乱の記憶だけが現在では語られますが覇王国が成立していた期間だけが魔界西域に平穏がもたらされていたのかもしれません。

武断的であっても平穏をもたらしたことがネロドスの最大の功績なのかもしれません。

 

2.西域自体に武断的な体制を好む気風があった これは1の説を前提にしたものになりますが、魔界自体が力こそ正義であり敗者の死は魔界の理として受け入れる気風があるようです。もし、魔界西域がネロドス登場前まで長く戦乱状態であったなら他地域より武断的な体制を受け入れやすい土壌があったのかもしれません。

 

3.統一しなければいけない理由があった これは無理やりにでも統一をし何らかの脅威から団結して西域を守らなければいけなかった事情があったのではという考えですが、ある可能性としては大国の西域への勢力拡大を阻止するためだったのかもしれません。

 

大魔王に就く前のヴァルザードもゲルヘナ原野の戦いでゼクレス魔導国の南進を退けたことが戴冠への後押しになったようですので、西域においても大国の進出を阻止しするために西域を統一し、とりあえずでも団結させ大国の野望を砕いたことがネロドスの大魔王就任への道筋を開いたという可能性はないでしょうか。

 

西域に勢力を伸ばそうとした大国とは、思い当たるのは時期的に考えてゼクレス魔導国かヴァルザード死後に後継者グジャラートに率いられた海運都市ザードかもしれませんし、今では滅び名前も残っていない国かもしれません。

個人的にはグジャラートは父親であるヴァルザードに自分の後を継ぐ能力がないと思われていたこともあり、自分の有能さを知らしめるために西域への進出を画策したがネロドスに敗れ、人心を失い失意から暗愚へとなり下がり海運都市ザードの破滅へとつながっていったという話があれば面白いなと思っています。

 

ネロドスの後継者

ネロドスが勇者アルヴァンに敗れ去った後、統治していたネロディオス覇王国は分裂し戦乱の期間に入ります。

 

西域からは後にマデサゴーラが大魔王として戴冠しますが、彼は魔界西域の統一はしておらずネロドス死後の魔界西域の最大勢力は「バルディスタ要塞」です。

バルディスタ要塞は戦乱の時代に少年兵の傭兵として戦場を生き抜いたヴァレリアによって建国され、強さこそを絶対の基準とし、魔界に鉄の秩序をもたらそうという思想を持った国家です。

バルディスタ要塞は徹底した実力主義であり、個人の能力で魔族であってもモンスターであっても出自に関わりなく出世することが可能です。

 

しかし、それ故に内部で下克上をを狙うものや過剰な忠誠心で災いを招いてしまう者も居りなかなか安定した国家とは言えない様子ですが、氷の魔女と恐れられるヴァレリアの圧倒的強さによって体制は維持されています。

 

この様子はネロドスの治世と似ているのではないでしょうか。

魔軍十二将も全員モンスターであり、魔族が支配層となっている魔界においては珍しい構成のように思えます。実力と忠誠心があれば出自に関係なく側近として取り立てる、そして魔王自身の圧倒的な強さとカリスマ性によって体制が維持されている。

 

ヴァレリアとネロドスの治世は似ています。

ネロドスは戦乱を起こしそこで狩った魂を自らの力としましたが、ヴァレリアは魔瘴石を兵器として利用した魔瘴弾を戦争に利用し大地を汚染しながら勝利を掴んでいます。

また、ネロドスとヴァレリアどちらも大型のハルバードのような武器を使っています。

ヴァレリアが幼少期にネロドスを直接みたことがあるのかは分かりませんが、彼女がネロドスをかなり意識した立ち振る舞いをしている可能性は十分あり得ると思われます。

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ネロドスに似てますね!この直後八つ裂きされ死んだデバリポ

ネロドスの死後に起きた戦乱で大切なものをすべて失ったヴァレリアが支配者のあるべき姿として意識したのが大魔王ネロドスだったというのは皮肉な話かもしれませんが、それだけネロドスが魔界西域においては評価されていた証なのかもしれません。

 

今回はここまで

次回は後編として大魔王マデサゴーラの治世を考えてみたいと思いす。