アスバルの改革は成功するか 親子二代にわたる改革

ver.5.2でお家騒動に見舞われたゼクレス魔導国

現国王アスバルが歴史あるゼクレスの国政改革を成し遂げられるのか、父の代から続く改革について考えてみたいと思います。

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以下ネタバレを含みます

 以前書いたゼクレスに関する記事

kyuroinu.hatenablog.com

 

ゼクレス魔導国の歴史

以前書いた「ゼクレス魔導国といにしえの大魔王」という記事を書いた時点では建国された時代、何人の大魔王を輩出したのかなど不明な点も多くありましたがver.5.3で明らかになったことが多くありました。そこをふまえてもう一度ゼクレス魔導国の歴史をみてみたいとおもいます。

 

ゼクレス魔導国は約7000年前に建国王ワラキウスによって建国されました。

国名はワラキウスの妹であるゼクリアに由来すると思われます。

大魔王として戴冠を受けたのは、初代ワラキウス王・第14代バルメシュケ王の二人です。

第7代ジグネール王は大魔王選定の試練を悠々と攻略しましたが生来の病身により戴冠を受ける前に急死をとげ大魔王となることはできませんでした。

古来より大魔王達がアストルティアへ侵攻するのに使った「魔法の門」と呼ばれる魔術を王家に連なる魔術氏が確立したことにより魔界において特別な立ち位置を獲得していおり、それにより魔導国と呼ばれていると本に記されています。

 

建国王ワラキウス直系の子孫のみが代々国王となっていますが現国王であるアスバルが何代目の王なのかは明らかになっていません。

名前が明らかになっている国王としてはアスバルの父親で先代国王であるイーヴも居ますがイーヴが第15代、アスバルを第16代と仮定すると約7000年の歴史で平均在位期間は430年程度となります。

当然、在位が短かった王もいるでしょうし逆に長い在位を誇った王も居たでしょうからあくまで目安ですが魔族は寿命が人間より10倍以上あると考えられるので人間で考えると43年程度となるのでしょうか。

日本の徳川将軍が265年間で15代なので平均在位39年程度なので7000年で16代というのは妥当な考えかもしれません。

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顔壁にゼクレス出身者は彫られていない

ただ、イーヴを15代として考えるとその父が大魔王バルメシュケとなりますが他国出身の大魔王ヴァルザードとネロドスの間に戴冠した大魔王なのかなど多くの疑問や謎は残ります。

 

イーヴ王時代に起きた内戦の危機

 

ゼクレス魔導国は現在の魔王アスバルの父親である先代イーヴ王の時代に内戦一歩手前まで行くという事態に陥りました。

 

その理由は、イーヴ王が臣下に相談なく外国と国交を結ぼうとしたり身分制度の撤廃を提唱したりと急進的な改革を志したことにより保守的で厳格な貴族政を敷くゼクレス国内で国王支持派と貴族派による分裂が起きたようです。

しかし、イヴ王の妃でありアスバル王の生母である王太后エルガドーラの尽力により内戦は回避されイーヴ王は幽閉されますが生まれたばかりのアスバルを誘拐しアストルティアへの逃亡を企て失敗、アスバルは連れ戻されイーヴ王アストルティアで死亡したとされていす。

 

ver.5.3で登場した元宮廷魔術師サラジャンの話によればエルガドーラ王妃に脅されイーヴ王がゼクレスの城下町に足を踏み入れるとたちまち命を落とすという死の結界を張ったようですが、この結界は後にサラジャンの頼みで主人公が解除するの事になるので実際には発動してなかったと考えるのがいいのかもしれません。

 

イーヴ王らしき人物が約300年前のラーディス王統治時代のヴェリナード王国を訪れていたことはラーディス王の娘であるセーリアが証言していますのでアストルティアへ逃亡したこと自体は事実だったのでしょう。

300年前のウェナ諸島といえば暴君バサグランデが暴れた時期ですがそこにイーヴ王が何かしら関わったのかなどは不明です。

 

イーヴ王アストルティアで本当に亡くなったのか、またどの時期に亡くなりどこに埋葬されたのかなども不明です。

 

イーヴ王が目指した身分制度の撤廃などの改革は現在、エルガドーラ王太后とその弟オジャロス大公を排除した後アスバルによって再び行われようとしています。

イーヴ王は何故急進的な改革を目指したのか、そしてなぜ失敗したのか、アスバルは父の志を実現できるのかについて考えを書いていきたいと思います。

 

何のための改革なのか

イーヴ王の改革はなぜ必要だったのでしょうか。

ゼクレス魔導国は保守的で厳格な貴族政度を持った国ですが、王家は初代ワラキウスから現在まで直系の子孫が統治者として君臨する魔界最古の血筋とも言われ、大魔王となった者が君臨していた国でも一代で滅んでしまうこともあり得る興亡の激しい魔界において約7000年の期間も国家として存続しているということは安定した体制といえるはずです。

 

それでも改革を行うべきだと考えた理由な何だったのでしょうか。

単純に身分制度の無い社会を目指すという理想主義者だっただけなのか、そうではく改革に迫られた何かしらの理由があったからであり、故にイーヴ王の子供であるアスバルも同じような改革を目指しているのではないでしょうか。

 

考えられる理由としては王権の弱体化があるのではないかと考えます。

魔界の歴史は戴冠を受けた歴代大魔王達はアストルティアへ侵攻しますがことごとく勇者と盟友の前に敗れ去っています。

ネロディオス覇王国や海運都市ザードがそうであったように大魔王が死んだあとは程なくして国は内乱に陥ったり王が打倒されています。

これは大魔王が偉大なカリスマ性を持っていたのに対しその後継者が能力不足もしくは後継者自体が存在しなかった事が主たる原因だと考えられますが、ゼクレス魔導国だけは例外的に7000年間国を存続しています。

 

初代ワラキウス王・第15代バルメシュケ王と二人の大魔王を輩出しています。

この両名ともアストルティアで勇者に敗れて死んだと考えられますが国は存続しています。これ以外にも後に大魔王となるヴァルザードと魔界の覇権をかけた戦い「ゲルヘナ原野の戦い」での敗戦など国家存亡の危機は何度かあったと思われますがそれを乗り越えれた理由はおそらくワラキウスに従い建国に尽力した四豪族の子孫をはじめとする貴族達が中心に王家を支持し支えたからだと考えられます。

 

貴族たちが王家を支持した理由は単に王家への忠誠心からくるもではなくゼクレス魔導国が存続しその中で特権的な地位を維持できた方が得策だと考えたからでしょう。

初代ワラキウスの時代なら忠誠心が勝るかもしれませんが、時代が下れば打算的な傾向は強まっていくのではないでしょうか。

 

当然王家を支持する見返りも要求したと考えられます。

実際にイーヴ王の改革をめぐって国内が混乱した時にはそれを収拾するために当時のエルガドーラ王妃は王家所有の領地の一部を大貴族たちに分け与えました。

この様に国難のたびに王家を貴族たちが支える見返りとして王家の所領や権益の一部がその時代の有力貴族たちに分け与えられその結果、徐々に王権は弱体化し王家の財力も減少し大貴族たちの発言権が増大していったのではないでしょうか。

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舞踏会ではよくも...許さねぇ...

もしかするとイーヴ王が即位した時代には大貴族たちの発言権は強大化しすぎて王であっても何も自由にできない状態であったのかもしれません。

もし、イーヴ王の先代が第十四代バシュメルケ王であったと仮定すると「混沌の魔術王」と呼ばれた大魔王の後ですから余計に苦労があったのかもしれません。

 

再び王権を強化するために改革が必要だとイーヴ王は考えたのではないでしょうか。

「ゼクレス王国興隆史」という本の中でイーヴ王が出したのは「貴族制度廃止例」であったと書かれています。

つまり、現在の貴族たちの身分に対する保証などは廃止されるわけですが、王制の廃止ではないわけです。ゼクレス王家は存続し王として君臨し続けるが貴族たちは庶民と同じ立場になるという事がイーヴ王が目指した身分制度改革だったということでしょう。

 

当然これが貴族たちから大きな反発を招く事は必然です。

そこで保守的で厳格な貴族政に反感を持っている国内の層をイーヴ支持派にすると同時に国内を牛居る大貴族たちと対抗し勝つだけの経済力を確保せねばならなかったはずです。

そのために新たな国と国交樹立を画策したのではないでしょうか。

前回の記事の中で、イーヴ王が国交を持とうと考えたのはマデサゴーラが統治していたゴーラ国ではないかと書きましたが、すでに交易が成立していたり大貴族が利権を握っているルートでは新たな財源とはなりません。

 

ゴーラやバルディスタのような新興勢力がイーヴ王の時代に台頭してきたとすれば、王家主導で国交樹立でそことの交易での利益を独占することも可能です。

その相手として偉大な芸術家でありゼクレスの貴族の間でも評価されているマデサゴーラの治めるゴーラは適していると思えます。

 

ゼクレスの価値観では自らの国以外は野蛮と見下しています。ましてや西域という名称で異民族扱いしている魔界西部の国との国交樹立は貴族たちから反感を買いやすいはずですが、厳しい階級制度に不満を持つ層からすれば歓迎されたかもしれません。

 

エルガドーラとの婚姻も

これも想像ですがエルガドーラとの婚姻自体も王権強化の目的だったかもしれません。

エルガドーラの家系は王家の血を引いていないとされています。

ゼクレスで長く大貴族の地位にあれば王位につけなかった王族が興した家と婚姻関係を結んだり養子として迎えるなどという事はあっただろうと想定できます。

 

「ゼクレス魔導国といにしえの大魔王」という記事の中で、王家の宝である「ゼクリアの大皿」「ゼクリアの黄金杯が示す事として、建国王ワラキウスとその妹ゼクリアは近親婚をした可能性があり、ゼクリアはワラキウスの子を産んでいたと書きましたがそれほどまでにゼクレス王家は血統と純血にこだわりがあるのです。

 

そのことはアスバルの容姿にも表れています。

アスバルが変身する白いドラキー。見た目はツンドラキーに似ていますがツンドラキーの豆知識に書いてあるように肌が白いのではなく色が薄いせいで白く見えるのです。

これはアルビノを指している可能性があります。

2003年までスペインで飼育されていた世界で一頭だけのアルビノゴリラであったコピート・デ・ニエベはその死後遺伝子解析で近親交配によりアルビノとして生まれたという事が反判明しました。

つまりアスバルが白いドラキーに変身するという事が、近親婚によって生まれた王族の子孫であることを表していると考えられます。

アルビノは先天的にメラニンの生合成に関する遺伝子情報の欠損によりメラニンが欠乏する個体の事であって、近親交配したからアルビノが生まれるというわけではありません。あくまでコピート・デ・ニエベの遺伝子がそうであっただけで実際には、彼には21頭の子孫が居ますが彼の白い体毛は遺伝していません

 

王家の血が入っていないという事は貴族としては家格が低かったと思われます。

それでも幼いころから弟のオジャロスと共に宮殿に訪れていたという事は家格は低いが何かしら評価されるべき能力や財力などをもっていたのかもしれません。

 

実際にエルガドーラは強大な魔力を有していたので、そういった家格の低い貴族とも婚姻をすることによって大貴族たちの影響力の低下をもくろんだ可能性もあります。

 

もしかした、その真意がエルガドーラに知られてしまったが故に王妃からも改革を否定され王位を追われたのかもしれません。

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赤いは花が意味するのは...

エルガドーラはイーヴから婚礼前に贈られた詩を死ぬまで大事にしていたことからも、イーヴに見初められての結婚は彼女にとって夢のようなものだったのでしょう。

しかし、それが政治的な意図をもっての事だったと知った時の絶望は計り知れないものが在ったのかもしれません。

故に、彼女は夫であるイーヴ王の勢力ではなく大貴族たちの利権を守るために動き改革を潰し夫にそっくりであるアスバルを自分の思うように動かそうとする歪んだ愛情を持ってしまったのかもしれません。

 

イーヴ王がエルガドーラ王妃に対しどういった感情で婚姻を申し込んだのかはわかりません。すべてが政治的な目論見だけであったとも思えませんが、自らが見初めた女性によって改革が失敗に終わったことだけは事実です。

 

アスバルの改革

現国王アスバルは王太后エルガドーラを魔界大戦で失い、その弟で王位簒奪を企んだオジャロス大公を排除したことによって自らの意思で王として歩み始めました。

 

まず彼は平民であっても国の重職に取り立てるというおふれを出しました。

これは先代イーヴ王が出した貴族制度廃止例をソフト路線に変更したと考えられます。急進的な改革を志したがゆえに失敗した父王のようにはならないように彼なりの考えがそこに現れていると思われます。

 

アスバルが父親の改革の方針を受け継いだという事は、ゼクレスが抱えてる問題の根本は今も変わっていないという事なのでしょう。

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考えてるふりのデバリポ

アスバルは自らオジャロスを粛清したことで頼りない王というイメージを覆し一応の民心を得ました。また大貴族であるベラストル家との関係も良好であり外交的にも先の魔界大戦を戦ったバルディスタ・ファラザードの両国との関係を劇的に回復させました。

そればかりか、新大魔王の城でヴァレリア・ユシュカと共に仲良く居住するという状態です。改革の方針だけ出して国政をないがしろにするのは不安ですが。

 

アスバルの改革が成功するかは未知数ですが不安要素もあります。

まずはオジャロスの様に王位を簒奪する事を企むものが出てきたという事態です。

王国の存亡の危機が何度かあったのではないかと書きましたが過去においては大貴族たちも王家を守る事の方が利益になると考え行動していたはずです。

しかし、オジャロスは王家の血を引いていないにも関わらずアスバルに王位の禅譲を迫り魔術による洗脳があったとしてもそれ以前からオジャロス待望論のような空気が市中には確実にありました。

過去には王の外戚などで権勢を誇った貴族なども居た事でしょうがそれでも王位の簒奪まで考える者は存在しなかったのにそれを企むものが現れそれを受け入れてしまうような素地が国内にあったという事です。

 

更にもう一つ、ベラストル家が莫大な財産を築いた方法が大魔王マデサゴーラと癒着によってだった可能性がある事です。

ベラストル家の屋敷の中にはマデサゴーラの依頼でアストルティアを調査した記録に関する日記が残されています。

 

「魔法の門」はゼクレス魔導国の最大の武器であり大魔王達もそれを利用せねばアストルティアへは渡れません。

この魔術がゼクレスを魔界で唯一無二の存在にしているのです。

 

本来であれば王家が厳重に管理しその使用はゼクレス王の許可がなければ利用できないようにせねばならないほどのものはずです。

にもかかわらず、魔界からの来訪者は結構な数いるようですしマデサゴーラもゼクレス王を通さずにベラストル家に依頼していたとすれば大問題なはずです。

 

魔法の門の開き方はすでに多くの魔術師が実践できる程度まで一般化してしまっているのかもしれませんがベラストル家の先代当主のように王家に許可なく商売としてアストルティアへの移動を請け負っておりそれによって財を築くことに王家へ対する罪悪感がなかったとすれば大貴族たちの王家への忠誠心どころかゼクレスへの帰属意識すら薄れているといえるのかもしれません。

 

アスバルが目指す改革が遅すぎたという事がないように願います。

だって、貴族も平民もすでに気づいてしまっているのかもしれないからです。

統治者がゼクレス王家の血統でなくても問題はないという事に。

 

最後に

今回も妄想多めで色々書きましたが初めてゼクレスに来て本棚を漁ったときから何となく理由もないのですがアスバルが古代エジプトのファラオである

ツタンカーメン(トウト・アンク・アメン)と重なるなと感じたのがスタートでした。

 

ツタンカーメンは父親であるアメンホテプ4世がアメン・ラー教団の影響力の増大により弱まった王権を再度強化するために行われた遷都と唯一神アテン信仰による宗教改革を伝統的なラー進行に戻し都も遷都前のテーベへ戻すなど改革への揺り戻しの中で若くして亡くなったファラオでした。

しかも彼の死後は王家の血を引かない将軍や大臣たちが王位に就く事になります。

 

父王の改革に対する揺り戻しの中で王位に就いた若き王、そこがアスバルと重なって見えたのでしょう。

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魔界の中で個人的に一番好きな国はゼクレスです。

もっともっと宮廷内のドロドロとした話が知りたいと常に思ってしまいます。

 

今回はここまで