いまから約200年前に滅亡した魔界南西部の大国ネクロデア王国、その滅亡事件から当時の魔界情勢と大魔王マデサゴーラの戴冠時期に関する考えを書いてみたいと思います。
以下、ver.5.0以降のネタバレを含みます。
ネクロデア王国
ネクロデア王国は魔界南西部でネクロダイト鉱石を含む鉱物資源の採掘と高い精錬技術で栄えた王国でした。
建国時期は不明ですが、片腕の男が暗鉄神ネクロジームからネクロダイト鉱石を授けられ神の命により堅牢な国家を造ったという独自の建国神話を持ち労働を神に捧げる尊いものと考えるというような独特の文化を育んできた王国でした。
※片腕という事で思い浮かべる神として北欧神話の「軍神テュール」が居ます。
テュールはオーディンの息子(異説あり)で火曜日(Tuesday )の語源ともなっています。父であるオーディンは片目の神でありこの事がナジーンが片目となったことと関係があるかは分かりません。ナジーンは右目を失いますがオーディンは左目を失っています。
日本でも鍛冶の神「天目一箇命(あめのまひとつのみこと)」は片目の神として有名です。昔は鉄の温度を確認するために片目で見る事から鍛冶職人の職業病として片目を失明するという伝承から片目の神となったとも言われています。
ナジーンはユシュカと魔剣アストロンを制作しているので天目一箇命から影響されたキャラクターなのかもしれません。
ドワチャッカ大陸のアクロニア鉱山・アグラニの町の始まりの伝承と似た点もありますがネクロジーム神とイプチャル神に何か関りがあるのかなどは不明です。
ネクロダイトを含む豊富な鉱物資源と高い精錬技術により栄えたネクロデア王国ですが、今から約200年前、魔界西域に勃興した軍事大国バルディスタ要塞のゾブリス将軍の手によって滅ぼされてしまいます。
王族・兵士・民衆のほとんどはこの時に殺害されてしまったようですが王族の中で唯一の生き残りと考えられる王子ナジーンと友人であるユシュカがゾブリス将軍を討ち鉄化による封印をしそのまま二人で国を去っています。
後にナジーンはユシュカが興した魔界南部の新興国ファラザード王国においてユシュカを支える副官として内政及び治安維持に大きな貢献をすることとなります。
ナジーンに妻子が居たかは不明ですが子供が居なかった場合はナジーンが魔界大戦において戦死した現在、ネクロデア王国の王家の血脈は途絶えた可能性が高いと考えられます。
ネクロデア王国滅亡時の魔界情勢
ネクロデア王国がゾブリス将軍によって滅ぼされた当時の魔界はどういった情勢だったのか考えてみると何故滅んだのかが謎に思えてきます。
ネクロデア王国は当時、交易ルートの大部分をジャリムハバ砂漠の小国家群の一部に頼っているという事が記録からわかります。
当時のジャリムバハ砂漠は大魔王ヴァルザードが建国した海運都市ザードが滅び小国家が乱立する分裂の時期だったと思われます。
その小国家を通じた交易相手として大国であるゼクレスやゴーラの名前もあります。
交易相手としての記載はありませんが、他には150年前にバルディスタによって滅ぼされたジャムール王国もまだ魔界西域に存在していた時期です。
他にも主人公がユシュカと初対面の時の会話からゲルヘナ原野南には剣魔の里も健在だった可能性がありますが確定ではありません。
まとめると
というのが最低限確認できる200年前の魔界情勢だったと考えられます。
このような情勢下でバルディスタとネクロデアは争っていたわけですが、その中でネクロデア側はゾブリス将軍が独自に軍を動かしているという情報を掴んでいました。
これは、ネクロデアが送り込んだスパイもしくは交易を通じて他国からもたらされた情報だったはずです。
ネクロデアは鎖国状態の王国では無くネクロダイト鉱石の精錬技術はネクロデア王国が独占している価値のある物であり、その交易相手はゼクレス魔導国やゴーラといった大国が含まれています。
このネクロダイト関連の技術を奪うことが目的でバルディスタが攻めて来たのなら何故他勢力はそれを黙認したのか謎です。
そして、バルディスタはネクロデアを滅ぼしその技術を奪った功績にも関わらずゾブリス将軍を行方不明として処理し旧ネクロデア領を「賢女の都レジャンナ」の王族ネシャロットによって封印されるまま放置したのかという謎も残ります。
各勢力の反応を推測してみる
ネクロデア滅亡時の各勢力の反応はどんなものだったのか考えてみたいと思います。
①.魔界南部勢力
まずネクロデア王国との交易を独占に近かった魔界南部の勢力ですが、大きな衝撃が走ったはずです。
大事な交易相手を失ったと同時に旧ネクロデア領がバルディスタの支配地となれば軍事的な脅威が迫ることになります。
そこでレジャンナが代表する小国群は生き延びた王子であるナジーンとその友人ユシュカを保護し、ネシャロットがネクロデア領を封印することでバルディスタと直接領地が接しあうことを避けるという対応をしたと考えられます。
②.魔界東部勢力
魔界東部の大国ゼクレス魔導国としてもこの状況は危険だと考えたはずです。
兵器としても使われるネクロダイト鉱石の輸入が止まりバルディスタが新たな交易相手となりますが今まで通りの取引ができるとは限りません。
さらにバルディスタは勢力拡大の野望が強く、精錬技術を独占でれば魔界西域統一だけでなくゼクレスの勢力地域にも侵攻してくる可能性は非常に高いと予想できたのではないでしょうか。
二国の争いに介入し停戦させるもしくはネクロデア側に援軍として参戦するという選択肢もあったはずですがそれも行われなかったようです。
その理由ですが、当時はイーヴ王の改革失敗と失脚による混乱で内政で手一杯な状況であったためではないかと予想します。
約300年前にヴェリナード王国を訪れていたイーヴ王ですが、200年前にはすでに失脚していた可能性が高いと考えます。
200年前にはすでに少年時代のアスバル王子とユシュカが出合いユシュカはゼクレスを追放されていますが、その当時の事をアスバルは記憶しています。
イーヴ王によってアストルティアに連れていかれた幼少期の記憶がない事からイーヴ王が失脚したのはアスバルが物心つくより前であり200年以上前だったと考えられるからです。
イーヴ王を失脚させたエルガドーラ妃によって大貴族達との対立解消や内政の立て直しの最中で対外的に積極的な行動は不可能だったのかもしれません。
エルガドーラ妃自体が国政への手腕は確かだが軍事に疎くゼクレスの内側にしか興味がなかったことも影響したのかもしれません。
③.魔界西域
魔界西域では少なくても3つの勢力があったわけですが
③-1.ジャムール王国
ジャムール王国はおそらく、最後の王となったゴル・ジャムールの時代で金の枯渇により経済的に追い詰められた状況だったと考えられます。
ネクロデア滅亡から50年後にジャムール王国はバルディスタに攻め込み逆に一夜で滅ぼされたといわれているのでこの時代には国力が衰退し傍観しているしかできなかったのではないでしょうか。
ただ、すでに枯渇してしまたとはいえおなじ資源豊だったネクロデアが滅ぼされたことから次は自分たちなのではないかと疑心暗鬼となり後の侵攻への原因となったのかもしれません。
③-2.バルディスタ要塞
バルディスタの行動には不可解な点があります。
魔王ヴァレリアの常勝不敗の武によって支えられる軍事国家ですが、ベルトロ以外の部下はまったく信用されていない体制下において、独自の軍団を持ちある程度の自由な軍事行動が可能なゾブリス将軍は特別な存在だったはずです。
それは将軍が過去には魔王候補の一人だった時期もあるという、名声と実力がヴァレリア配下の中で突出していた事がうかがえますが、そんな将軍をヴァレリアはどう思っていたのでしょうか。
頼もしい部下だったのか、それとも自分の地位を脅かしかねない存在で理由さえあれば粛清したいと考えていたのでしょうか。
個人的には後者だったのではないかと考えています。
※ゾブリス将軍の単独行動はヴァレリアにとって自らの地位を危うくする可能性があったのではないかという推測を以前「ヤイルと戦争」という記事で書きました。
ゾブリス将軍の思惑が何であれ、自らが指示していない軍事行動であったとしてもネクロデア王国を滅ぼした事実に対し将軍を行方不明程度の処理で終わらせ、旧ネクロデア領の占領をせずに封印されるのも放置していたのかがとても不可解です。
滅ぼし奪いつくしたからもうどうでもよくなったのか、それともそうしなければならない事情があったからなのかで大きな違いがありそうです。
③-3. ゴーラ
大魔王マデサゴーラによって魔界西域の北部地域に建国された国家です。
資源のない地域と思われているようですがネクロデアはゴーラとの取引で「得がたい 産物」を入手できると記されているので交易は盛んだったようです。
軍事利用もされるネクロダイト鉱石を入手することはゴーラにとっては自勢力の南側に西域最大の勢力バルディスタ要塞がある以上とても重要な意味があったはずです。
取引相手を失うだけでなく、バルディスタとの軍事力の差が開き生存を脅かされる事態になったはずですがそれに対しどういった行動をとったのでしょうか。
さらに、200年前にはマデサゴーラは大魔王に就任していたのか否かによっても情勢は大きく変わったはずです。
大魔王の本拠地が経済的・軍事的な損害を受けるような形での侵略戦争を起こしたバルディスタになにも制裁を加えないという事がありえるのでしょうか。
ゴーラの態度は不明ですがもう少し考えてみたいと思います。
200年前マデサゴーラは大魔王だったのか
ネクロデアが滅ぼされた当時ゴーラの魔王マデサゴーラは大魔王として戴冠を受けていたのかは魔界の情勢を考えるうえでとても重要です。
まだ大魔王ではない時期であったなら、ゴーラとバルディスタとの戦力差が大きく一国で対抗することが不可能でなおかつ魔界西域という魔界の辺境で差別的にみられてる地域の魔王を援助しようという大国もなかったの知れません。
イーヴ王時代のゼクレスならその可能性はあったでしょうが王が失脚しゼクレス自体が混乱の中だったのならそれもできなかったはずです。
※魔界西域という呼び名について触れた過去記事です
しかし、もし大魔王となっていた場合には無断で侵略戦争をしかけ貴重な資源と技術を有するネクロデア王国という大国を滅ぼす軍事行動は大魔王の治世に対する挑戦であり許されない事であるはずです。
さらに、それを見逃していたとなると大魔王としての権威にも傷がつくはずですが、それでも制裁も加えることができないほど立場の弱い大魔王だったのでしょうか。
大魔王城の会議室にある「魔界紳士録」をヒントに考えてみたいと思います。
魔界紳士録で主人公が手に取れるものには、
名簿には 魔王モルゼヌ ゾブリス将軍
魔元帥ゼルドラド など
ひと昔前の 名士たちの名が 記されている。
と、書かれています。
モルゼヌスはネクロデアの最後の王ですので、魔界紳士録が大魔王マデサゴーラ時代の物なのかそれ以前の物なのか気になるところです。
クエスト「新たな武器をこの手に」で出会う亡霊となった伝説の鍛冶職人レブロの話はネクロデアが滅ぼされた200年前には大魔王の座には誰も就いていなかったような印象を受けます。
しかし、個人的にどうしても魔界紳士録の内容とこの話が合わない気がします。
主人公が読んだ魔界紳士録がマデサゴーラ時代のものでないとするならネロドス時代かそれ以前、少なくとも1000年以上前に発行されたものとなります。
1000年以上前であるのに、ゾブリス将軍・魔元帥ゼルドラドは現在と同じ称号で呼ばれていたのでしょうか。
将軍とは一軍を統率する指揮権を持つ者の称号の一つもしくは軍閥の指導者の地位に対する呼び方ですので、ゾブリスがヴァレリアの配下になる前にどこかの国の将軍の地位にいたということはあり得るかもしれません。
しかし、魔元帥ゼルドラドの元帥という称号は将軍たちをも束ねる軍隊の中での最上級の階級であり戦争においては王の補佐役を務める役職でもあります。
現在登場している魔界の人物の中にも元帥の肩書を持っているものは居ません。
魔元帥の称号をゼルドラドが1000年以上前から持っていたとすればかなりの大国もしくは大魔王に仕えた軍のトップにこそ相応しい肩書のように思えます。
それはどこの国だったのでしょうか。
血統が重視されるゼクレスでは不可能でしょうし、ネロディオス覇王国や海運都市ザードの軍のトップだったのでしょうか。
以前にTwitter上で歴史の中では自称将軍・自称元帥も存在していたと教えていただいたのでゾブリス将軍も魔元帥ゼルドラドもあくまで自称だった可能性もありますが、大魔王の即位記念に出される紳士録に自称将軍の地方の一軍閥や大規模な野盗集団の首領が記載されるのかという疑問もあります。
さらに気になるのは魔界紳士録というのに魔王の名前がモルゼヌのみというのも気になります。単純に主人公が読み飛ばしているだけとういのもあるかもですが。
ネロドスやヴァルザード時代の魔界各地域の魔王の名前はわかっていませんが少なくとも現存する魔界最古の国家であるゼクレス魔導国には魔王は居たはずです、ゼクレスの魔王となればそれだけで名士として記載されておかしくないはずですがその名もありません。
そこで推測になりますが、この魔界紳士録が制作されたときには紳士録に掲載されるような魔王が少なかったもしくは居なかったあるいは大魔王の意向で掲載したくない魔王が居たという可能性はないでしょうか。
もし、主人公が読んだ魔界紳士録が大魔王マデサゴーラの時代に制作されたと仮定し、それがネクロデア王国が存在していた200年前より昔に制作されたとすれば、
- ゼクレスは300年ほど前になるとイーヴ王が失脚しアスバルが王位に就く前の空白期間に当たるので魔王が不在だった
- 魔界南部はユシュカがファラザードを建国する以前なので小国家が乱立する状態で大きな力を持つ魔王は居なかった可能性が高い
- バルディスタはすでに建国されゾブリス将軍も仕えていたが何らかの事情により魔王ヴァレリアの名前は記載できなかった
と考えることはできないでしょうか。
強引な仮定ですし、何故に魔王ヴァレリアは掲載されなかったのか、レブロは大魔王は居なかったととれる発言をしたのかがまだ謎として残りますが、その謎がネクロデア王国の滅亡の原因と当時の魔界情勢を明らかにするのではないかと考えています。
大魔王は無条件には承認されない
ネクロデア滅亡時に既に大魔王マデサゴーラが選定されていたという前提で、鍛冶職人のレブロの亡霊が200年前に大魔王が居なかったかのような発言をした背景としてネクロデア王国がマデサゴーラを大魔王として承認していなかったという可能性はないでしょうか。
大魔王は大審門が開く時期に試練を乗り越えた者の中から、魔仙卿に「器」として相応しいと認められたものが大いなる闇の根源の一部との戦いを経て大魔王として選定を受けるというものですが、主人公がそうであったように同じく試練を生き延びた大魔王候補やその他の勢力に選定を受けたからといって、即大魔王として承認されるわけではないようです。
魔仙卿による器としての審査は個人的な贔屓や狙いが含まれてもいいようですしヴァルザードのように大魔王の選定を受ける前から確実視される存在の方が少ないのかもしれません。
さらに、モルゼヌとマデサゴーラは大魔王の選定をめぐって争った関係だったなんてこともあったらどうでしょうか。
そうであるなら、主人公がそうだったように魔界西域を統一したわけでもなく西域最大勢力でもないゴーラの魔王が大魔王の選定を受けたとしてそれを他勢力が承認するには一定の功績を求められたのかもしれません。
ネクロデア王国としてはマデサゴーラをまだ大魔王として承認しておらず自国の領民に対しても新大魔王はまだに正式決定していないと伝えていたのかもしれません。
次に、バルディスタ要塞ですが魔王ヴァレリアは本心はともかく表面上は勢力拡大を狙うが大魔王就任に関しては興味がなく、さらに誰が大魔王になろうとも自国の行動に制限はかけさせないという態度をとったのではないかと考えます。
ver.5.0でもユシュカに説得されるまで大魔王の選定には参加したがってはいませんでしたし魔界統一も果たしてない状況でもバルディスタ単独でアストルティアに侵攻していますし、大魔王選定後も主人公を認めず独自に大魔瘴期対策を進めようとしていました。
おそらくマデサゴーラが大魔王に選定された時にもこういった態度を示したと思われます。
それには理由があり、ヴァレリア体制の求心力は彼女自身の常勝無敗の武によって保たれており大魔王選定に赴きそこで万が一にでも負け、新大魔王の風下に立たなければいけない状況になれば、魔界西域に武力でようやくもたらした安定が一夜にして崩壊してしまう危険があるので彼女としてはそのような態度に出るしかなかったと推測します。
大魔王そのものを認めない態度をとるバルディスタはゴーラと国境を接している事もありマデサゴーラにとっては邪魔な存在だったかもしれません。
よって魔界紳士録にヴァレリアの名が乗ることを良しとせず削除させた可能性はないでしょうか。
それでもヴァレリア配下のゾブリス将軍の名前は載っているという事には何か意味があるのでしょうか、もしかしたらそこにマデサゴーラの思惑があったのかもしれません。
マデサゴーラ黒幕説
200年前、マデサゴーラがすでに大魔王だったのか魔王でしかなかったのかに関わらず今わかる範囲で当時の情勢を彼の視点で考えてみると
- 魔界東部は自勢力から遠く魔王不在であり脅威ではない
- 魔界南部は自勢力から遠く小国乱立で指導者が不在で脅威はない
- 魔界西域はバルディスタ要塞という軍事大国が拡大を続けている
- 魔界南西部は交易相手ではある大国ネクロデア王国がある
- バルディスタとネクロデアは争っているが膠着状態
当時の魔界でマデサゴーラにとって脅威となり、なおかつ安定した大国はバルディスタとネクロデアの二か国だったのではないでしょうか。
この状況で、マデサゴーラは自らの野望と理想実現のために一気に事を進めようとしたのではないかという説を唱えてみたいと思います。
現在は膠着状態でもいつ均衡が破れてネクロデアが負けるかはわからない。
バルディスタという暴れ馬に単独で対処すれば勝っても代償も大きいかもしれない。
これでは魔界に安定は訪れず偉大な芸術家としても理想実現が遅れてしまう。
そこでマデサゴーラはバルディスタのヴァレリアを排除しトップを自分の息のかかった人物に置き換えようと画策したのではという考えです。
その策略は
①.常勝不敗のヴァレリアが攻め落とせないネクロデアをその部下で独自の軍団を持つゾブリスに落とさせるためにゾブリスを間接的に唆すもしくは大魔王としてその許可を秘密裏に与え協力する。
②.ゾブリス将軍がそれに成功すればバルディスタ内での力関係に変化が生じヴァレリアの求心力は低下し下克上が発生する可能性がある。下克上とまでいかなくとも確実に力を削ぐことができる。
③.ゾブリス将軍がバルディスタのトップに就けばヴァレリアよりも懐柔しやすく旧ネクロデア領の資源を優先的に入手できるように手配させるもしくは共同管理できる。
④.もし、ゾブリス将軍が失敗したとしてもバルディスタの軍事的・対外的ダメージは避けられずその時は自らが号令をかけネクロデアへの救援とバルディスタ包囲網を作って締め上げていく。
これに成功すれば魔界の西域と南西部は一気にマデサゴーラ傘下に加わりゼクレスや他の勢力も彼を認めざるを得なくなるというシナリオだったのではないでしょうか。
この布石のためにも魔界紳士録にはヴァレリアの名は載せず、ゾブリス将軍の名前はいつ魔王になってもいいように載せたのかもしれません。
しかし、この策略は失敗してしまいます。
それはゾブリス将軍はネクロデア王国を滅ぼす事には成功するが、王子ナジーンとその友人ユシュカによって討たれ封印されてしまうという予期していなかった状況になってしまった事です。
さらに賢女の都レジャンナの動きも早く、事件を隠蔽するかのように旧ネクロデア領を封印する事で亡命してきたナジーンとユシュカを守るという行動に出た為に様々な情報が遮断されてしまい状況が不透明になってしまった。
これによってマデサゴーラとしてはゾブリス将軍という協力者を失うと同時にヴァレリアを追い詰めるには決定打に欠ける事になってしまい、バルディスタ側も体制維持のために将軍を行方不明扱いにすることで魔王が部下に出し抜かれたという事実をうやむやにし他勢力からの追求なども回避しようとしたと考えられます。
マデサゴーラの謀略は失敗に終わりましたが、その後一応は大魔王として魔界の戦乱を平定しアストルティアへの遠征を行っていることからしばらくの時間をかけてでもバルディスタを抑え込んでいく事に成功したのだと思われます。
このあたりの両国の駆け引きなどはもしかしたら魔元帥ゼルドラドとベルトロの間で腹の探り合いをしながらおこなわれたのかもしれません。
むしろそういう話が読みたいと思っています。
最後に
今回は200年前の魔界の情勢を考えながら最後は陰謀論的な展開をかきましたが、少ない資料から色々と考えることはあいかわらず楽しいです。
ゴーラとバルディスタの勢力争いの犠牲になってしまったかもしれないネクロデアの住民たちですがそうならばあまりにも悲しい事です。
王族の生き残りであったナジーンは死にもう国として復興することはありません。
アバノク祭司長の亡霊は
私たち 亡者が消え去った後は
いずこからか 人々が この地を訪れ
新たな暮らしを 始めていくことでしょう。
と、語ります。
土地が再生し新たな生活が始まってもそれは別の国であってなにか虚しいものをかんじてしまいます。
それでも、旧ネクロデアの住人たちの魂は不滅なはずです。
それはナジーンがその命をかけて仕えたファラザードの王ユシュカは不死鳥ベンヌの化身であるからです。
※ユシュカの性質に触れた内容を含む過去記事です。
ナジーンの魂が今もユシュカと共にありその炎を燃え上がらせているようにネクロデア住民たちの魂もナジーンと共にいつの日か復活できると信じます。
今回はここまで