ゼクレス魔導国といにしえの大魔王 

バルディスタ要塞・ファラザード王国と並ぶ魔界三大強国の一つであり現存する中では魔界最古の王国であるゼクレス魔導国

国の体制や文化・歴史とゼクレスが輩出したいにしえの大魔王について、なぜながらく大魔王を輩出していないのかについて考えてみました。

以下、ver.5.2までのネタバレを含みます。

ゼクレス魔導国の歴史

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ゼクレス良いとこ一度はおいで 物価は高いし 差別はきつい

ゼクレス魔導国は初代国王ワラキウスによって建国されました。

魔界最古の国といわれていますがそれが何年前で現国王で何代目なのかなどは記録上はわかりません。

魔界の誕生がルティアナが末子グランゼニスを産み落とした後以降であり大いなる闇の根源との戦いが終わるより前だったとver.5.2で判明しますのでもし魔界誕生から間もなくして建国されたとするならとんでもなく長い歴史を持つ可能性があり、建国時に最低でも四つの豪族を従えさらにゲルヘナ幻野を代々支配してきた蛮族サバスの長から宝斧を献上されたりしていますので建国した時点である程度以上の規模をもつ国としてスタートしたと考えられます。

いにしえの大魔王と呼ばれている大魔王を輩出していますが、現在は長らく大魔王を輩出していないとされています。それがいにしえの大魔王以来なのかそれとも複数の大魔王を輩出しているのかは不明です。

記録に大魔王の選定に向かう途中で急逝してしまった国王がおり、その死を当時の魔仙卿も惜しんだとされていますがそれが何代目の国王だったのかも不明です。

王家は代々強い魔力を有する者が多いようで、太古の昔当時のゼクレス王が禁呪に手を染め魔神と化してしまう事件がありそれを妻であるミアラ妃がいのちを代償に封印したミアラの宝杖が存在し、王家の始祖に封印され以来使役されている巨人レイジバルス同様に強い魔力をもつものがこれらを利用できます。

現国王アスバルの父である先代国王イーヴの代で、身分制度の撤廃などの政治改革をめぐり国王支持派と貴族派で内戦一歩手前まで行くという王国存亡の危機に見舞われましたが、王太后エルガドーラの尽力により内戦は回避されイーヴ王アストルティアへの亡命を企てますが失敗、ほどなくして無念の死を迎えました。

イーヴ王死後は政治力と決断力のある王太后が事実上国政を取り仕切っていました。

古来より大魔王達がアストルティアへ侵攻するのに使った「魔法の門」と呼ばれる魔術を王家に連なる魔術氏が確立したことにより魔界において特別な立ち位置を獲得していおり、それにより魔導国と呼ばれていると本に記されています。ゼクレス魔導国の魔導国とは自称ではなく他称であったものが長い歴史の中で定着していったという事のようです。本来はただ、ゼクレス王国と名乗っていたのかもしれません。

ゼクレス魔導国の国名ですが建国王ワラキウスの妹である「ゼクリア」の名前に由来していると考えられます。

 

ゼクレス魔導国の政治体制

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現国王アスバルもワラキウス直系の子孫

ゼクレス魔導国は健国王ワラキウス直系の子孫が代々国王として君臨います。

現国王のアスバル・先代の王であるイーヴもワラキウスの直系の子孫ですが、実質的に国政を取り仕切っていたエルガドーラ王太后、オジャロス大公の姉弟は王家の遠縁であると記されていますがワラキウス直系ではありません。

貴族であるリーヌスがそのように発言していますし、大貴族であるベラストル家の現当主であるリンベリィも「オジャロスは王家の血を引いていない」と明言していますので王族の遠縁ではあるが少なくともワラキウス直系の子孫ではないといえるでしょう。

ここまでワラキウス直系の血筋を重視しながら宝物庫にある「ゼクリアの黄金杯「ゼクリアの大皿」は国名の由来とはいえ、王の後継者に関わる宝物に直系子孫ではなく妹の名がついているという謎があります。

社会は王家を頂点とする厳格な世襲貴族制で成り立っており、生まれた家柄で地位がほぼ決まり国内での階級のほかに他国民や魔族でないものに対して強い差別があります。

低い階級に生まれたものは国外に出るか、貴族たちに賄賂を贈るなどして取り入ることで出世の道をもとめるようです。

 

ゼクレスの文化

貧富の差が大きいようですが、富裕層や貴族たちは美術品を収集する事も多いようで貴族宅には多くの絵画や彫刻が飾られており、城下町中心部では路上で絵画や工芸品などが販売されています。

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ぼくたち貧乏人には買えません!

現国王アスバルは密かに六大陸堂という店を開きアストルティアから流れ着いた品々をコレクションしていますがそれは異世界への憧れと共に、王族としての美術品収集の延長かもしれません。

儀式的なものではあるものの王族の婚礼前には、姫君に対して自作の詩を贈るという習慣もあり、おそらく他の貴族たちも王族の習慣に倣うことが考えられますので文化的にはかなり豊かだといえそうです。

 

政治体制には限界が来ている

魔界最古の王国であり、かつては大魔王も輩出したことがあるゼクレス魔導国ですがその政治体制には限界が来ているのではないでしょうか。

城下町には身分制度に対し不満をもち先代のイーヴ王をいまだに指示する勢力も存在しておりそれらは厳格な身分制度の弊害と共に、実力主義のバルディスタ要塞や自由な気風のファラザードといった新興勢力の台頭が影響を与えていそうです。

また大貴族達の政治的発言権はかなり大きく、イーヴ王の改革をめぐっての対立ではエルガドーラ王太后が王家の領地の一部を大貴族たちに与えることで納めているので、大貴族たちの発言権はさらに拡大していると考えられます。

こういった閉鎖的な国家のなかで弱体化する王権、改革を邪魔する大貴族たちという状況で現王家以外でもいいから国の立て直しをという空気があったようです。

オジャロス大公の野望が明らかになりアスバルにより粛清されたのちにも、彼への理解を示すものや信じられないと述べるものは階級があまり高くない人々が多そうです。

これは元々の厳格な身分制度にたいする不満とver5.1で起こった魔界大戦でのエルガドーラ王太后の戦争に対する無能さが露呈し、さらに戦後のインフレで生活困窮者が多く出た事で王家や大貴族に対する不満が募りそれを背景にオジャロス大公が国王の叔父という立場で国政を掌握していくことにもむしろ歓迎というような人も多くいました。

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近衛兵詰所のツキード氏 まもなく左遷されそう…

 ゼクレス城内にいる兵士ツキードはオジャロス大公に期待を寄せた人物で、魔瘴塚調査にも同行していることからオジャロス大公の腹心の一人ではないかと想像できます。彼の鎧は国境警備や城下町に配置されている兵士とほぼ同じものですのでおそらく彼の出自自体が身分の高い家の出ではなく実力はあっても出世できない運命だったところをオジャロス大公に仕える事で近衛兵となるまで出世できたのかもしれません。

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精鋭兵は鎧も豪華

城内には彼のほかに兵士が複数配置されていますが、それは「ゼクレス精鋭兵」と呼ばれる存在で鎧も高級感があり、アスバル・エルガドーラ派が多いようです。おそらく彼らはエリートで家柄も貴族階級の子弟で現体制に何の不満も持っていないからこそエルガドーラ王太后に忠誠を誓い出身階級の権益を保護してもらっていたのでしょう。

現国王アスバルはこういった平民や下級軍人たちの不満を感じ取っており、国政を掌握した現在身分に関係なく人材を登用するといった改革の方針を示しましたが、この改革が成功するかは過去の例からも大貴族たち次第でしょう。

国王アスバルは国政の改革を成功させるために新しく選定された大魔王の権威を利用しようと考えている節があります。貴族ディータは、「アスバルは大魔王に仕えるためしばらく国を留守にする。大魔王城に居室まである。」と発言しています。

父の代からの改革を一部でも成功させるためには平民からの指示だけでなく大貴族やエリート軍人などからの支持も必要ですので、ベラストルス家からの支持は無条件で得られそうですが、国内の他の既得権益層からの支持を得るためにも新大魔王と懇意であるというのは大きな意味があるからです。

でも国を留守にする一番の理由は、単純に新大魔王である主人公に心酔し大魔王城にいれば頻繁にユシュカにも会えるし…なのかもしれません。

アスバルはどうも他人に依存しやすい性格なのが心配です…。

 

何故ながらく大魔王を輩出していないのか

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大魔王もたいへんなのだ

その理由は、単純にメリットが少ないからと考えます。

ゼクレス魔導国は、代々の大魔王も使用してきた「魔法の門」の発明により魔界においてその地位をゆるぎないものとしており強力な軍隊も保有している事から、誰が大魔王に選定されようともゼクレスを無視はできません。魔界において常に最強の二番手という地位を保つことで自国の利益を維持してきたのではないでしょうか。

また、大魔王ヴァルザードを輩出した海運都市ザード、大魔王ネロドスが統治したネロディオス覇王国、大魔王マデサゴーラの建設した魔幻都市ゴーラといった歴代の大魔王の本拠地がことごとく滅んだり、大惨事に巻き込まれたりしていることから歴史あるゼクレスの命運をかけてまで大魔王にこだわる必要がなかったと思われます。

大魔王になるというはアストルティアへの侵攻が常に課題となる事から、その国にとっては大きな負担がかかるのでしょう。

 このように実力があっても大魔王を目指す必要がない中でアスバルが大魔王の選定の参加した背景には、来るべき大魔瘴期への対応と弱体化した王権の強化を図るために大魔王の地位を利用しようと考えたエルガドーラ王太后の思惑があったと思われます。

 

いにしえの大魔王とは何者

ゼクレス魔導国が輩出した「いにしえの大魔王」、長い国の歴史から考えて神話時代末期に初代勇者と戦った大魔王の可能性さへあるとても重要な人物ですが、何者なのかはver.5.1まで明言されてきませんでした。

しかし、ver.5.2において主人公がゼクレスで王冠を受け取る際にアスバルが

「ここ ゼクレス城地下深くには この国の開祖である いにしえの大魔王が 身に着けていた 王冠が 保管されているんだ」

という発言をしています。これによって、いにしえの大魔王とは建国王であるワラキウスであると確定したと考えていいでしょう。

ならば何故、いにしえの大魔王と呼び大魔王ワラキウスと呼ばないのか、それは大魔王ワラキウスはアストルティアへ侵攻し勇者と盟友の前に敗れ死んだからではないでしょうか。

 

建国王としての偉大な功績はあっても、勇者に敗れて死んでしまった。他の大魔王の本拠地と同じく、ゼクレスも建国間もない時期に指導者を失い滅亡の危機に見舞われたのかもしれません。それを何とか後継者や臣下たちが乗り切り現在まで続く王国の礎を築いた経緯があり、ワラキウスの敗北を恥と考えその名を汚さないために、いにしえの大魔王と建国王ワラキウスとを分離して語るようになったのではないかと考えます。

ワラキウスがいにしえの大魔王であったとなると、宝物庫にある宝のうちの二つ「ゼクリアの黄金杯「ゼクリアの大皿」の謎が解けるような気がします。

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金杯でかんぱーい!

開祖の直系子孫の血筋が重要視される国王の誕生と死に関わる宝物に、ワラキウス自身やその子供の名前ではなく妹であるゼクリアに名前がついているかですが、それは勇者に負け死んだワラキウスの最後を看取ったのがゼクリアでありその血を受け魔界へ持ち帰った杯が「ゼクリアの黄金杯」。持ち帰ったワラキウスの首を乗せともらったのが「ゼクリアの大皿」であったからでしょう。

つまりゼクリアはワラキウスと共にアストルティアへ出征し、そこで兄の死を看取り魔界へ帰還したのです。もし、戦った勇者と盟友が初代であった場合は二人は双子すので双方に血を分けた味方と共に戦ったという構図だったのかもしれません。

「ゼクリアの大皿」には死んだ王の首を乗せ弔うとともに、王の後継者が生まれた時は大皿に乗せ優れた王になるように祝福するという儀式にも使われます。

ワラキウスの首が乗せられたとしたらその後継者である子も生まれて間もなく祝福として乗せられたはずです。

本来国王を弔うことや生まれた後継者を祝福する儀式はワラキウスの妻であり後継者の母親である妃が取り仕切ると考えられますが大皿の名前からも分かるようにゼクリアが取り仕切ったようです。

後継者を産みすぐに生母が亡くなったのならわかりますが、もし違うならこれはゼクリアの役割でしょうか、それをすべき理由があるとするなら…

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大皿はお祝い事にもつかえるよ

ゼクリアはワラキウスの子を身ごもっており魔界へ帰還後に子を産みそれが二代目国王となったという事をこの二つの宝が示しているのではないでしょうか…つまり二人は近親婚をしていたのです。

ちなみにキリスト教の聖杯伝説も12世紀以降にムーア人の伝承を通じて広まったという説があり、それによると血が満たされた杯はヨーロッパの魔女たちが使う大鍋と同ように「子宮のシンボル」とされ女性的なるものの象徴とされています。

この説を取り入れて話が展開されたのが映画にもなった「ダ・ヴィンチ・コード」です。

つまり、ゼクリアが黄金杯にワラキウスの血を受けたとは、ゼクリアの子宮にワラキウスの子を授かったと解釈ができるのです。

比類なき魔力で建国の祖となったワラキウスがなぜ国名を妹の名にちなんで付けたのでしょうか。すくなくても建国に関してゼクリアの果たした役割やワラキウスに与えた影響はとてつもなく大きかったとは考えられます。

もしかしたら、建国事業も大魔王就任もすべては愛するゼクリアの為になされたのかもしれません。

 

最後に

今回はゼクレス魔導国の歴史や政治に関して自分なりの考えを元に書かせてもらい、最後はワラキウスとゼクリアが兄妹で近親婚していたという話になりましたが、初代勇者と盟友が双子である事実、いにしえの大魔王であるワラキウスの妹がゼクリアであるという事実、そして大魔王選定に関わる現魔仙卿が主人公と兄弟姉妹であるという事実が一つの流れとしてあるのではないかという気がしています。

本来国宝であるはずのいにしえの大魔王の王冠を出張土産でも渡すかのような軽さでアスバルが主人公に渡してしまうのもこの流れに関係があるのではないかと思えてしまいます。

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もらったからには返さんぞ ぼくのもんだ

今回はここまで